東京血風録
遥と一緒に、儂も寝ることにした。
儂の場合、寝るというのとはちょっと違うな、意識を遮断した。
何も考えず、何も思わない。
そうこうして、何時間あまりが経ったのであろうか、人の気配を感じて意識を戻すと、霧華の気配を感じた。
今し方入ってきたのではない。もう、遥の寝そべるソファーの前のスツールに腰掛けていた。
いつからそうしていたのか、身動ぎもせず、じっとソファーの上の遥を凝視していた。
それもその筈、こんな異様な光景あったもんじゃないだろう。
最愛の弟が、腹から木刀を突き出したまま、ソファーに寝そべっているのだ。
何が何やら、どうなってこのような状態なんだろう、と疑問符が頭の中を占めているに違いない。
それでも霧華は、大騒ぎすることもなく見つめておるのじゃ。
度胸がいいのか、肝が据わっておるのか大した女である。
木刀を突き刺してから、3時間は経った筈だ。儂本体・黒檀の木刀はどうなったかの?そんなことを考えていると、霧華が話し出した。