東京血風録
千代田区にある、王道流除霊処“オカルトOHDOH”の入口前である。
午後2時。
3人の男女が集まっていた。
1人は、がたいのいい詰め襟制服の男、
藤堂飛鳥である。
「昨日、連絡をくれたのに一体何処へ行っていたのですか?こんな時に」
1人は、フレームのない眼鏡を掛けた端正な顔立ちの男。
黒を基調とした、落ち着いた服装であるが、薄い生地の黒のロングコートが目にとまる。
京都府伏見区のお寺の跡取りである。
「いや、その、ちょっと私用が」
しどろもどろになりながら、それだけ答えた。
もう1人は、ショートボブの小柄な女の子である。
奈良県は大和郡山市にある神社の娘であり、巫女でもある。
こちらはラフな格好で、黄色のカットソーにハーブパンツという出で立ちである。
憮然とした態度で、飛鳥のことを睨め付けていた。
実は、すぐにでも遥の事務所へ行こうと言う眼鏡の男の発言を無視して、
「せっかく東京に来たのに、何処にも行かないなんて納得いかない!」
と、ガイドブック片手に駄々をこね、半ば無理矢理東京観光に連れて行ったのであった。
そのことに関して、初対面の飛鳥に注意されたのが、不服だったらしい。
ついさっき、事務所がある雑居ビルの前で、先に着いていた飛鳥と合流したばかりである。
とりあえず事務所へ、と飛鳥が案内したのだが、誰もおらず待ちぼうけの最中の会話である。
「自己紹介をしましょうか」
飛鳥が大人の対応を見せる。
すかさず眼鏡が、
「まずは僕から。はじめましてですね」
と、告げたところで、
「王道家当主が来てからでいいんじゃない」と、機先を制した。
男2人は、黙ってしまった。
ちょうどその時、エレベーターの到着音が鳴り、扉が開くと詰め襟の学生服。
長い布包みを携えている。
王道家当主こと、王道遥、到着。