東京血風録




 遥に案内された一行は事務所の中へ。

 ソファーを勧められたが、誰も座ろうとせず、藤堂飛鳥が云った。
「自己紹介を済ませましょう」

 すると、ショートボブの女の子が、軽く一礼するや否や、
「この度は、敗戦、誠に残念でございました。さぞや、悔しゅうございましょう」

 2人の男は青醒めた。
「こ、こら!真琴っ!」
 眼鏡がたしなめるのも聞かずに、
「わたくし、奈良県在住、○○神社の巫女である、龍王院 真琴(りゅうおういん まこと)です。龍王院流浄霊術師範代を務めております。祖父がお爺様に大変お世話になったそうで、つきましては恩返しと申しましょうか、鬼退治に協力させていただきます所存でございます!」
矢継ぎ早にそこまでまくし立てた。
 軽く笑みを浮かべると、
「はじめまして」と、しおらしくなった。


 2人の男は、安堵の表情をした。
 当の遥は、さほど気にした様子もなく、話を聴いいた。

 次は眼鏡の番だった。
「ただいまの発言、失礼致しました。わたくしは、京都府伏見区○○○寺住職見習い兼鳳竜堂流護符祈祷術師・鳳竜堂 柊一(ほうりゅうどう しゅういち)と申します。」

 柊一は、落ち着き払った声で話す。
「何から話せばよいのかわかりませんが・・・。
我々は、我々の祖父が遥さんのおじい様から恩義を受けた、という共通項で結ばれています。あなたが事務所を立ち上げたと聞いてから、藤堂さんとは連絡を取っていました。
あなたのサポートをせよ、が全員に与えられた使命なんです。
偶然なんですけど、それぞれに能力と申しますか、特性がございまして先の件でご存知のように、藤堂さんは霊を弾き飛ばす・即ち、防御。
真琴は、肉体を癒やす能力があります。
即ち、救護
そして僕は、護符による結界と霊的効果の無効化、後方支援を得意としております。
これに依って、遥さんの戦いを有利な方向へ導きたいと思います」

 遥は話を黙って聞いていたが、訳が分からない話の連続で、正直疲弊した。
 しかし、これほどまでの支援体制、遥のじいは彼らのじいに、一体どれほどのことをしたのじゃ?恩義とはいえ、気になるわい。


 藤堂飛鳥も自己紹介を済ますと、一同は勧められるまま、ソファーへ座った。
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