東京血風録
柊一の話が続く。
「今回、相手が“鬼”だったんですって?
わたくしも魍魎の類は相手にしてますが、鬼は初めてです。
やはり、違いますか?」
遥は、逡巡した後、
「別物でした。」と、答えた。
「奢りがあったのかも知れませんが、あそこまでとは、と言うのが正直な感想です。地力の差と云いますか、根本的な力の差で圧倒されました」
遥の口調は、妙に淡々としていた。
思い出したくない過去を、無理矢理絞りだしてるからだろうか?
「それより、鬼の男が妙なことを言っていて何かご存知ないかなぁ、と」
遥のやつ、ちゃんと聞いておったのか。
「何やら、因縁があるらしくて、決着をつけたいから長野県の○○○に来い、とのことでした。わかりますか?」
遥の問いに、柊一は眼を閉じて考え込んだ。
「遥さんがご存知ないなら、僕らには何とも。
文献があるかも知れませんので、後で調べてみましょう。
その因縁に起因してるのかも。」
柊一という男、なかなかのキレ者よ。
「それより、遥さんお身体は大丈夫なのですか?
リベンジなんですが、いかがなさるおつもりで?」
ほう、この状況でそれを切り出すとは。
展開か早いのぉ。
遥は暫し考え、
「体は大丈夫ですよ。藤堂さんの方が大変なくらいです。
それと、リベンジなんですが、2週間の猶予がありますので、修行しようかと思います。今のままじゃ、前回と大差ありませんから。」
と答えた。
遥め、そこまで考えておったのか。
柊一はすかさず、
「わかりました。
あと、長野県○○村ですが、聴いたことがあるかも知れません。
確か、対妖怪・魍魎討伐用結界布陣“御業の結界“(みごうのけっかい)がある村です」
と。
「御業の結界・・・」
全員が口にした。
「メガネ、何?その御業の結界って?」
と真琴。
「メガネはやめなさい。御業の結界とは見たことはありませんが、自然界を利用した結界で、いわゆる闘技場さ。
敵と戦いながら、そこへ誘い込む。そして結界の中に閉じ込める。
そして、結界のパワーを発動させる。
すると、敵の能力は弱まり、自身の能力は倍増する。
より優位に戦おうとする先人の知恵さ。」
「そんなものが存在するんだ」
と飛鳥。
「ただ、自分が不利になるような場所に相手を誘い込むなんておかしな話ですね。
罠かも知れませんね」
柊一が冷静に分析した。