東京血風録
 王道霧華

 王道家長女。22歳。
 長身。美貌秀麗。頭脳明晰。しかしながら天然。世間知らず。
 彼女こそが、“オカルトOHDOH”オーナーである。 
 王道家に生を受け、中学1年までは何不自由なく過ごした。あの日までは。
 父・王道暁李が突然失踪した。多額の借金を残して。
 

 突然の貧困に際してでも、持ち前の器量と天然とで、苦を微塵とも感じさせなかった。
 それ以上に、疲弊憔悴しきった母を助け労い、生活に安寧をもたらした。
 しかしながら、彼女が高校2年の時に母が他界した。
 気丈に振る舞いながら、当時小学5年生だった遥の面倒をみると決意した。
 彼女の残した保険金は、父の残した借金の返済とマンションのローンの返済へと消えた。
 アルバイトと僅かながらの貯金を切り崩しながら、ほぼ自力で高校を卒業、大学まで進学した。
 苦境にありながら、その凡庸とした佇まいは以前と変わらず暮らしていた。


 ところが、2ヶ月前突然事務所を設立すると豪語したのである。
 それが、王道流除霊術所オカルト
OHDOHなのである。
 彼女自身は、霊感的なものは全く持っておらず、言ってしまえは疎い方ですらある。
 視えないし、断てない。
 まるっきり、遥任せで店を開業したのである。
 それ以降、依頼は1軒もなく今日に至っている。


 先程の事務所での話の件は、初めての依頼が契約されるがどうかの話であった。

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