東京血風録
動きの止まった男に対して、柊一がとった次の行動は、先ほどより一回り小さい護符を人差し指と中指に挟んだ状態で、口許へ運び言霊(マントラ)を唱えた。
その護符を、カードを飛ばす要領で前方へ飛ばすとクルクル回って、男の胸にきれいに刺さった。
護符が淡く光ると、男は力なくぐったりした。
「ッシャーーーーーッ!!!
藤堂さんゴーーーーーッ!!!」
叫びながら、右手を指差しの形で前へ突き出していた。
柊一の横から、飛鳥が飛び出していた。
例のストレートを打ち出す体勢にもうなっていた。
飛鳥の拳は正確に男の身体の中心を狙い向かっていた。
男の身体まで、あと30センチほどの所で空気がたわむのがわかった。
飛鳥の拳と男の身体は反発し、後方へ押し出される形となった。
ぼっ、という音と共に蜘蛛の巣から外れた男の身体は、後方にのけ反りながら飛んでいった。
その体から、白い霧のようなものが霧散していって、霧を引きずりながら男は地面を転がり、止まった後は動かなくなった。
「派っ手ーーーーッ!!
イエスイエスイエス・イエスッ!!!」
柊一のテンションはマックスになり、小さなガッツポーズを決めていた。
見事な連係である。
柊一と真琴は別として、初めて組んだとは思えない、攻撃パターンである。
三者三様で立っている姿は、実に様になっていて、見栄えがした。
この3人が、王道遥のサポートに回るのだ。こんな心強いことはない。
しかしながら、王道遥に関わったことで
3人に非情な運命が訪れることは、この時点で誰も知る由がなかった。