東京血風録
 剣鬼については、追々語るとして、ここから王道遥の“悪霊狩り師”としての運命の日々が始まるのである

 元々、視える能力はあった上に、伊號丸を手にしたことに依り、断つ能力も発現した。

 初めては、道端でうずくまっていた地縛霊であった。何か遥は、懇願しているように感じた。普段なら視えたとしても素通りするのが常だった。
 なるべく感情を感じないように心に蓋をして、視ない気にしない様に徹していた。
 その時ばかりは、あまりにも儚いばかりかその弱々しさから思わず立ち止まってしまったのだ。
 逝きたい逝きたいと繰り返すそのうずくまりは、生前女性のものだった。もう、現世には未練はないという。
 ただ、逝かせてくれればそれでよいというので、どうしたものかと長い間思案した。
 儂も、そんなにみだりに遥の頭に語りかけることはなかった。じっと、その背中に背負われながら、決断の時を待った。
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