桜色の恋 (龍と桜とロボットと。)








「よし、これで大丈夫ね。
後は切られたところとか打撲とか、ない?」


先代の春樹さんの妹さん…



絵里さんが処置を施した左腕に
そっと手を添えながらそう私を見上げた。



「は、い…
切られたのは服なので…あるのはその時についたかすり傷くらいで…」


それも、絵里さんが処置してくれたし…




そう答えると
よかった、と言いながら
私の前にしゃがんでいた絵里さんが立ち上がる。


そのまま絵里さんを目で追って、
顔を上げた。




絆創膏とかを片付けていた絵里さんが
私にふっと目を向けて丁度目が合った。


ちょっと困ったような
優しい微笑みを浮かべた絵里さんが
もう一度私に近寄る。



「…よく、頑張ったわね」


ポン、ポン、と椅子に座った私の頭を
撫でてくれる。



「っ…」

そっと俯いた。


どんな顔をすればいいのか、分からなくて。



「もう大丈夫よ。
あいつらは、ちゃんと強いから。」


顔をあげようとか、絵里さんを見ようとか
そーいうこと何も考えずに
勝手に体が動いて
絵里さんを見上げた。


「…大事な、大事な人を、仲間を、
守るくらいの力はあいつらは持ってるのよ
貴女が迷惑とか面倒とか
そういうこと考えないでも、大丈夫なのよ」


そう言って、


優しくて、柔らかくて、暖かい、
笑顔を向けてくれた。


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