桜色の恋 (龍と桜とロボットと。)
料理なんてレトルトかインスタント。
良くて出来合いのものを買ってくるくらいで。
自分が作ったもの以外、
料理と呼べるものなんてほとんど口にしてこなかった。
歪な形で固い野菜。
焦げが浮いてるルー。
でも、一人で食べる普通のカレーなんかより美味しくて。
一人で食べるレトルトよりも何倍も美味しくて。
『美味しい』
そう思った時には、もう涙が溢れてきていた。
「ひ、より……?」
椅子に座る私を見上げた圭斗の顔が
ぼやけて見えなくなる。
「お、いしいの…
作ってもらっ…初めて……!」
全然言葉にならなくて。
背もたれ側に立っている宏明の手が何も言わずに頭に乗って
涙が止まらなくなった。