桜色の恋 (龍と桜とロボットと。)





何も言っちゃダメ。

口を開いたら、
本音を言ってしまいそうだから





「出てけ」


涼の声を耳に、
駆け足で外に飛び出した。













「っく…ぅ、ぁ……」


もう何度も通った道。


涙でぼやけて見えなくても
駆け足で通れるくらいには
何度も通って、慣れ親しんだ道。



もう、2度と通ることは無いんだっ……!





もういい。
あれを演じられたら私はもう別にいい。

もうどうなったっていい。

みんなが私を嫌いになって、
悲しむんじゃなくて憎むなら。

みんなが悲しまないならそれでいいんだ。


















「日和!!!」



宏明の声が聞こえて、
条件反射で足が止まる。



「嘘なんだよな!?」


振り向きもせずにうつむく。



ボロボロと涙が後から後からこぼれた


「言わされたのか?脅されてるのか?」


少しずつ近づいてきている
季節特有のムシムシとした空気。

体にまとわりつくそれが嫌で、
聞こえてくる宏明の声から遠ざかりたくて。




近づいてきている気配を感じて
体が突き動かされる。



「っ…ダメなの!!」


振り向いちゃ、ダメだったのに。




「私は、もう、ダメなの!!」

みんなと、一緒に居ちゃ。



「ほっといて!」

お願いだから。
みんなを、守りたいの。




「私はっ!!」


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