月に一度のシンデレラ


「はぁい、どうぞ」

水の入ったコップに両手を添えたしぐさ。こういうところに「育ちの良さ」が出てしまうんだよな、って思う。明るい茶色のロングヘアも、ミニのワンピースも似合わない。俺がコーディネートするなら、セミロングのストレートヘア。カラーは黒褐色。毛先は少しカールさせてもいい。ワンピースはミニよりも膝丈。

髪がウィッグだというのは、推測から確信に変わっていた。高価な品のようではあるが、人毛ではないようだ。触れてみればわかる。
そして、激しく抱き合ったせいで心なしか薄くなった目元。25歳くらいかと思ったが、もしかしたらもう少し上の年齢かも知れない。

問題は、どうして外見と身元を偽っているのかということだ。

コップの水に口をつけながら、俺は自分がこの女のことを「知りたい」と思っていることに気がついた。
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