月に一度のシンデレラ
ホテルには休憩で入ったが、明日は土曜日だし、このまま泊まってみるのも良いかもしれない。そうしたら素顔が見られるし。もしかしたらウィッグを外したところも。
俺が宿泊を提案しようとした瞬間、マリカが言った。
「あ…もう11時半なの!? 大変。帰らないと」
「いいじゃん。帰るのだりぃし、泊まってこうぜ」
マリカは嬉しそうに笑ってチュッと俺の唇に口づけた。ドキン。我知らず、鼓動が跳ねるのを感じる。可愛い。この女は…可愛い。
女を性欲処理の道具としか考えてこなかった俺にとって、こんな風に思うのは本当に久しぶりのことだった。もしかしたら中学生以来かも知れないぞ。
「ごめんね。明日も早いの。また会ってくれる?」
俺は曖昧な笑みを返した。宿泊を断られたことに少しだけ腹を立てていたから。でもそれ以上に、また会えるということが嬉しいと思った。いつ会えるだろう。仕事が立て込んでいるから、少し先になるかも知れない。それでも2週と空けずに会えるだろう。