月に一度のシンデレラ

「どっちもいないけど。マリカはどうなの」

「あたしだって、どっちもいないけどっ」

間を置かずに答えたが、俺が本気にするわけがない。まぁいい。追い追いわかることだ。

「なぁ、良太さんって言いづらくないか?」

「言いづらいってことは無いけど…じゃ、良太? 呼び捨てはちょっとな…」

マリカはちょっと俯いた。そして、勢いよく顔を上げると、言った。

「良ちゃん」

笑顔が眩しい。まるで、渋谷のネオンみたいだ。

「良ちゃんって、呼んでもいいかな?」

衝動的に、彼女を抱き締めたくなった。帰したくない。それも、もしかしたら誰かが待っているのかも知れない家に帰すなんて…。


落ちてしまったのか?俺は。恋に。それも、出会ってわずか数時間で。
恋なんて空々しい言葉、この俺が使う日が来るなんて。


呼んでいいよ、って答えるのが精いっぱいだった。
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