月に一度のシンデレラ



定食屋に着くと、揃って鯖の味噌煮定食を注文した。ヤッさんは溜息混じりに言う。

「カツ煮定食にしたいとこだけど、やめとくわ。最近腹が出てきてよ」

「元から出てんじゃん。好きなもん食えよ」

会社を一歩出ると完全にタメ口だ。

「バカやろ。お前はいいよな。何食っても細くて」

ヤッさんは周りにちょっと目をやってから、小声で言った。

「お前、昨日どこ行ってたんだよ」

「どこって?」

「しらばっくれんな。俺からの着信見ただろ。ほら、例の取引フイにして落ち込んでたから、飲みに誘ってやろうと思ったのに」

「…ああ…」

昨夜、マリカと別れてからスマホの画面を見たら、ヤッさんからの着信が何度か入っていた。急用なら留守電を入れるはず。どうせ会社で会うからいいとそのままにしておいたのを思い出した。
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