月に一度のシンデレラ
「上手いもんよねぇ。そのつけま、どこの?」
メイクを始めた私をしげしげと見つめながら、ノリが訊いた。
「100均のだよ」
私は笑う。慣れた手つきでメイクを終えた。ここ3年の間一度も染めていないセミロングの黒髪をまとめ、ウェーブのかかった明るい茶色のウィッグを装着する。
「う~ん。20代前半にしか見えない」
ノリが溜息まじりに呟く。
私は鏡の中の自分を見つめた。
OK、いい感じ。満足気に頷いて立ち上がるとブラウスを脱いだ。身に着けているブラジャーが露わになる。
「また痩せた?」
ノリの言うとおりだ。このひと月で2キロほど痩せた。半年前から比べると6キロは痩せている。
なぜかって、簡単だ。恋をしているからだ。
マリカには大好きな人がいる。
「彼ってさ。細~いの。釣り合わないのはイヤじゃない?」
「細マッチョ?」
ノリが舌なめずりをする。
「ヤメロ、いやらしい顔すんの」
私は笑うとノリの額を「ぺちん」と叩いた。彼女は一瞬顔をしかめてから
「彼って美味しいのぉ?」
それはそれは嬉しそうに訊いた。