月に一度のシンデレラ


逆ナン。万里子だったら絶対にしない行動だ。

「大学生?」

手近なカフェに入ると、彼はあたしにそう訊いた。
内心、嬉しくて飛び上がりそうになったね。だって万里子は32歳だから。

「ううん。OLです」

「嘘だろ。会社で働いているようには見えないよ」

「働いてるもん」

少し頬っぺたを膨らませてから言った。

「名前教えてください。あとLINEのIDも。お友達になって?」



万里子はOLではない。在宅で通訳の仕事をしている。時々はちょっとした小説を書いたりもしてる。収入はまだまだ安定しないから、コールセンターのバイトも掛け持ち。
頭が良くて、名門の大学を出てる。本当は英語力を活かした仕事 ― 商社とか、貿易会社に就職したかったんだけど、大学4年のときに妊娠して捨てられて、自分一人で子供を育てることにしたんだ。
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