月に一度のシンデレラ


その決断のせいで父親からは勘当されて、しばらくは実家の敷居をまたぐことを許されなかった。でね、ヒロが4歳になる頃に父親がガンで死んだの。死ぬ半年くらい前には和解できたのが救いだったね。それからは母親ともうまくやってる。

いつも黒い髪を後ろでひっつめるように結んでセカセカ歩いてる。顔にはそばかすが浮かんでるけど、メイクで隠そうともしない。ヒロの前だけではすごく優しい顔で笑うの。料理の腕も大したもんだと思うよ。

でも、男を見る目は徹底的に問題ありだと思うね。あの男とさえ出会わなければ、もう少しラクな暮らしが出来てたはずよ。ま、ヒロが宝物だから、結果オーライかな。


えっ?あたし?
マリカ。22歳。

万里子がヒロを妊娠してることがわかったときの年齢だよ。そのときで、あたしの中の「時間」は止まっちゃったの。
万里子とマリカの性格は180度違う。万里子はね、自分が理性で押さえつけてる部分が爆発したのが、マリカだって分析してる。

つまりあたしはマリカであり、万里子でもある。
万里子の一番の理解者、言うなれば親友であるとも言える。直接言葉を交わすこともあるよ。あたしの頭の中でね。
…ちょっとわかりにくかったかな?


あ、来た!彼が来た。あとでまた説明するね。
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