心見少年、音見少女。
……と言おうと思ったが、冷静に考えると、ここにいるという事は日和も奇病か能力か何かしらあるという事だ。
もし、そのせいでこの性格になってしまったのなら、怒る事も出来ない。
取り敢えず、日和の睨みつける視線を少しでも和らげようと、佐月は話題を日和にもっていってみた。
「えーっ……と、岡野はどんな体質なんだ?」
「……音が『見え』る」
「え?音?」
「机を動かす音、車が走る音、……そういうのが、全部文字になって、『見え』る」
「??」
よくわからない。自分のように、心が見えるのと同じ感覚だろうか?
「漫画とかで、後ろに効果音があるだろ。あれが現実的に見えるという事だ」
やっぱりイマイチわからない。例えがわかりづらい。
……ん?わからない?
そういえば、ここに来てからほとんど心が『見え』ない。
キョロキョロ周りを見渡していると、今度は日和が教えてきた。
「ああ、これのせいで見づらい、いや、もしかして見えないのか?」
日和が顔の右のこめかみ辺りの髪に付けている、翡翠色の大きめの硝子玉みたいな髪飾りを指した。
「これは『珠(たま)』。もっている能力が反発し合って、身体に影響を起こすおそれがあるから、これはそういうのを防ぐ為のもの。炎を出せる火影と、水を出せる水晶なんかがそうだな」