心見少年、音見少女。
「ふふ♪ゴメンネ佐月クン〜冗談だよ〜♥でもちょっとは緊張ほぐれたかな?」
パッと手を離すカゴメ。その顔はもう端麗な小悪魔からいたずら好きのお姉さんに戻っていた。
「……」
呆然と立ち尽くすしかない佐月である。
「カゴメ先輩、新しい後輩が出来て嬉しいからって、あまり虐めないでくださいよ」
後ろから女の子が背伸びをして、カゴメの背中をぽふっと叩いた。
長い睫毛が人形のように白い肌に影を落とし、左右をリボンで留めた銀色に近い輝く黒髪がさらっと揺れる。
かなりの美少女だが、佐月はどこかで見たことがあるような、既視感を覚えた。
「どうも、時田 氷雨(ときた ひさめ)です。初等部五年で、物を凍結させる能力を持ってます。」
「トキタ……時田……あ、水晶の妹か?」
「はい」
「せやで!結構顔似てるやろ?」
水晶が氷雨の肩に手を回し、隣に並ぶ。
二重の目に、すっと通った鼻筋、色白な肌。二人共よく似た整った顔立ちをしてる。
「兄ちゃん、煩い。兄共々、これからよろしくお願いします」
「あでっ!!」
兄の頭をパシンと引っぱたいてから、氷雨は深々と頭を垂れた。
どうやらこの兄妹の仲は、水晶の一方的なモノらしい。