心見少年、音見少女。
「お、岡野?!どうしたんだよ!」
「佐月!日和の目を隠せ!!」
間地先生が怒鳴るようにして指示を出す。
「え……は?!」
「いいから早く!」
なんだかやばい状況らしい。
取り敢えず佐月は、間地先生の言うとおりに日和の目を後ろから手で隠した。
リア充カップルがやる『だーれだ?♥』ってやつをやってるみたいでちょっと恥ずかしい。
けど、そんなこと思ってる場合じゃない。
他のクラスメイトは直ぐに自分の席を立ち、窓を閉めていく。
すると、廊下と窓の方からザワザワと声が聞こえてきた。
いつの間にか外は雨が降っていたようだ。
普通クラスのうちの一つが、校庭で行っていた体育を体育館でやることになったらしい。
雨の音と、廊下の生徒が喋る声と足音で、X組周辺が煩くなってくる。
「おい!うるせえ!!今授業中だ!静かにしねぇと全員の口縫合すっぞ!!」
間地先生が教室の出入口から顔を出して、廊下の生徒たちに怒鳴り声を上げた。
教師とは思えない罵声だ。
廊下の生徒は特に最後の部分に恐れをなしたようで、一気に静かになった。
そのまま一言も喋ることなく、足音を立てずに教室の前を通り過ぎていく。