心見少年、音見少女。

「お前の教室はそちらではない。お前、私と同じクラスだ。私も行き先は同じだから、ついて来い。」
 
「え?ちょっ、まっ、待って、……えええええぇぇぇ!?」

いきなり腕をぐいっと引っ張られたと思うと、彼女は引きずるようにして佐月を連れて行った。

(普通のクラスがある本館とは真反対の方に進んでるけど……何処に行くんだ、コイツ?
 ……全然『見え』ないし……?)

何が何だか分からないままに引きずられて行く佐月だが、これから俺は普通の高校生活を送れない気がする、という事だけは感じていた。




連れて来られたのは、X組と書かれた看板が掛かった教室だった。

「新人を連れて来た!!」

バァンと乱暴に引き戸を開ける少女。

佐月はもう抵抗する気も失せ、ぐったりした状態である。

少女に腕を引かれたまま、連行された犯人のように一緒に入室した。


ここは……確か中央館と呼ばれる、本館の他にある、もうひとつの建物。

音楽室やパソコン室があるのは、去年母親と行った学校見学で知っていたが、こんな教室があったとは知らなかったな。

蛍光灯がはめ込まれた天井、学校のプリントやら時間割やらが貼ってある壁、木製の床。それと学級文庫が沢山置かれた本棚。

そんな至って普通の教室の中には、小学生から高校生くらいまでの男子や女子が数人いた。
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