心見少年、音見少女。
正面入口からてこてこ歩きながら入ってきたのは、臙脂色のベレー帽が良く似合う三人の幼い女の子だった。
三人共鏡に写したようにそっくりな顔立ちをしている。三つ子らしい。
ハーフだろうか。濃い灰色のおかっぱ頭に、それぞれ青、緑、黄色の瞳をしている。
「あれ、遅かったね、那々(なな)、実々(みみ)、遊々(ゆゆ)。」
「「「藜兄〜!!」」」
藜が親しげに手を振ると、三つ子は走って藜の元へ来た。
「ちょっと調子悪くて保健室行ってた!」
「調子悪くて保健室行ってた!」
「行ってた!」
さっきから三人でエコーのように話してるが、打ち合わせでもしてるのか?
佐月はそう思いながら隣にいた金に聞く。
「あの三つ子、誰だ?」
「ああ、初等部一年の草壁(くさかべ)三姉妹です。
青い瞳が長女の那々ちゃん、緑が次女の実々ちゃんで、黄色が三女の遊々ちゃんです。」
「へー」
藜に沢山撫でてもらい、ぐしゃぐしゃ頭になった三つ子が、今度は佐月に興味を持ったらしく、駆けてきた。
「新しい人!お前の名前は何だ!」
「お前の名前は何だ!」
「何だ!」
那々、実々、遊々の順にエコーのように問いただす三つ子。