心見少年、音見少女。

「おはよーっす……って、おいおい、もう少し優しく連れてこれへんの?新人君雑に扱ったらアカンやろ。ビビってもーてるがな」

眼鏡をかけた、微妙な関西弁の男子がこちらに向かってきた。

スラリと背が高いから、ネクタイの色を見なければ三年生くらいに見える。

もう一人、活発そうな女子が飛び跳ねるようにこちらに来た。
 
動くたびに低めの位置に結ばれたポニーテールがぴょんぴょん揺れる。

「おはやっほーい!
 あ、ちょっと、ひよりん!乱暴に連れて来ちゃったの?すいしょーの言う通りだよ!せめてちゃんと事情を話してから連れて来なさいよ!もー!」

「……すまない」

ひよりんと呼ばれた彼女はしゅんと俯いて、席にちょこんと座った。

「いやぁ、このけったいのがすまんかったな!
 悪い奴とちゃうねん、只のコミュ障やから堪忍したってや!まぁとにかく座りィな」

グリグリと彼女の頭を小突きながら椅子を勧められる。

「あ、どうも……」

言われるがままに席につく。キシキシと音がする、ちょっと古いが馴染みのある椅子と机だ。

ようやく気分が少し落ち着いたところで、こっそり目を動かして周りを『見た』。

それでも、景色はさっきから変わらないままだった。

(おかしいな……何も『見え』ねぇ……)



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