心見少年、音見少女。
関西弁の彼が後ろの席からガタガタと椅子を持ってきて、佐月の横に座る。
「改めて自己紹介せんとな。僕、時田 水晶(ときた すいしょう)!君とおんなじ新・高校一年生やで!」
水晶は眼鏡の奥にある二重の目を細め、ニコニコした人懐っこい笑顔を見せた。見てると自然とこちらも笑顔になってしまう。
「ほな、よろしゅうに!」
水晶が右手を差し出す。握手を求めているようだ。
こいつとなら、仲良くなれそうだ!あの無表情強引女はちょっと苦手だけど。
そんな事を考えてから、佐月も右手を差し出した。
「……よ、よろしく!」
手を握り返した瞬間、
ビシャアアアァァッ
「冷たああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
冷水だ。いや、氷水?とにかく一瞬で指先の感覚が無くなるくらい冷たいものが右手を襲う。
どこから出てきたんだ?
とりあえず佐月は水晶の手を解き、ブレザーのポケットに入れていたハンカチで手を拭いた。
「あ、水晶!いくら嬉しいからって気ぃ抜いちゃダメでしょ!」
ポニーテールの女子がまた来た。腰に手を当ててプンプンと怒る。