心見少年、音見少女。
思わぬ事態に、すばしっこい良美と足の早い間地先生を筆頭に、全員が廊下に出て、男を追った。
「待ちやがれ!」
良美がライオンの鬣のような髪を振り乱して駆けた。
「良美さぁーん!」
天見はもう半泣き状態でバタバタと手足を動かす。
私もすぐに追いかけたが、体力が無くて一番後ろになってしまった。
「……ぅぉおらっ!!」
バチン!
良美の手から放たれた雷が、男の後頭部に向かって直進する―――が。
カン
「邪魔だ」
男はそれを、手首につけていた小さな盾で防いだ。
―――ありえない。
良美は、X組の中で最も、最大にして良質な能力を持っている。
あの男は、多分能力者ではない。能力があったら、天美を掻っ攫った時に宙に浮かせるなり金縛り状態にできたはずだ。
「と、とにかく追うぞ!」
星夜先輩が、気合を入れる。
確かに、驚きのあまり皆走る速度が少し落ちてしまっていた。