心見少年、音見少女。



外に出るのは危険であるため、水晶の部屋に置いてあった食料を食べることになったが―――決定してから五分足らずで、三分の一を火影が食べてしまった。

「火影、おまんの意見は?」

「ふぇ?なぁにー?あたし、ひよりんの『奴らが』から聞いてなかった!」

「最初しか聞いてないんかい!聞いとけや、アホ!ほんまに緊張感ないなァ!」

水晶は部屋の隅に置いてあった雑誌を丸め、パカンと火影の頭を叩いた。

さすが関西弁男子。威力は弱いのに音だけよく響く打ち方だ。

「腹が減っては戦ができぬだよ、すいしょー。とりあえず落ち着いて、食べながら話せば?」

「お前が殆ど胃に収めてしまったから、私達の分が少ししか無いのだよ!」

珍しく日和も怒鳴る。

「じゃ、『ぶしはくわねどたかよーじ』だ!」

「……」

自分が食べるのをやめるという選択肢は、こいつにはないのだろうか。


  コンコン


どこかから音がした。

今度は火影が食料を食い潰す音ではない。外から聞こえる。

誰かが窓ガラスを叩く音だ。
< 64 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop