心見少年、音見少女。
外に出るのは危険であるため、水晶の部屋に置いてあった食料を食べることになったが―――決定してから五分足らずで、三分の一を火影が食べてしまった。
「火影、おまんの意見は?」
「ふぇ?なぁにー?あたし、ひよりんの『奴らが』から聞いてなかった!」
「最初しか聞いてないんかい!聞いとけや、アホ!ほんまに緊張感ないなァ!」
水晶は部屋の隅に置いてあった雑誌を丸め、パカンと火影の頭を叩いた。
さすが関西弁男子。威力は弱いのに音だけよく響く打ち方だ。
「腹が減っては戦ができぬだよ、すいしょー。とりあえず落ち着いて、食べながら話せば?」
「お前が殆ど胃に収めてしまったから、私達の分が少ししか無いのだよ!」
珍しく日和も怒鳴る。
「じゃ、『ぶしはくわねどたかよーじ』だ!」
「……」
自分が食べるのをやめるという選択肢は、こいつにはないのだろうか。
コンコン
どこかから音がした。
今度は火影が食料を食い潰す音ではない。外から聞こえる。
誰かが窓ガラスを叩く音だ。