心見少年、音見少女。
中にはたくさんの弁当やおにぎり等が入ってる。
(……ん?)
佐月は一つ、妙な点に気がついた。
前にいた水晶と目を合わせると、彼は冷や汗が流れるのを隠すように、無言で眼鏡を押し上げた。
火影と日和は、誤魔化すようにして三人からレジ袋を受け取り、中身をガサガサと出している。
聞いてはいけないことだろうけど、聞かなきゃいけない気がして、佐月は木花に質問した。
「……木花。藜先輩の能力で時間を止めて、買い物に行ったんだよな?」
「はい、そうですけど」
「時間が止まってるということは、人も物も止まってるってことだよな?」
「はい」
「レジの人も、レジカウンターも止まってるってことだ」
「……はい」
「お金は払ったのか?」
「……」
木花が誤魔化すようにして三つ編みを弄り、論土が手の甲で鼻の下を拭い、藜がいきなりラジオ体操第一を始める。
……泥棒か。万引きか。
「そ、そんなことよりですね!」
万引きを『そんなこと』で済ませた木花が、慌てて話題を変えた。