心見少年、音見少女。
まあ、今は緊急事態。事が落ち着いてからこっそり払えば良いだろう。
「さっき、藜先輩に時間を止めていただいたついでに、園庭で見かけた研究者の顔を撮ったんですけど……やっぱり、去年天見ちゃんをさらった人と同じ人でした。
佐月さん、この人に注意してくださいね!」
木花が目配せすると、一度頷いてから論土がスッと無言でデジカメの画面を見せる。それと同時に、高一の四人がそれを覗き込んだ。
時間を止めてからの撮影だからか、指名手配犯のポスターみたいに、綺麗に正面から撮られている。
写っているのは、寝ぐせだらけの黒髪に、薄汚れた白衣。年齢は三十代後半から四十代前半といったところの男性だ。
マッドサイエンティストを思わせる風貌である。
「この人が?」
「確かに去年の時と同じ人だー!」
「間違いないやろな。違うとこ言うたら、若干髪が伸びたくらいや」
「同じ人間と見て、間違いは無いだろうな」
―――キイイィィン……―――
「っ!」
佐月は急激な頭痛と耳鳴りに襲われた。
「佐月さん?」
「どないした、佐月くん?」
木花や水晶が、心配そうに顔を覗き込んできたが、頭痛と耳鳴りは収まらない。