心見少年、音見少女。
『早く』『戻って来てくれ』『寂しい』……
そんな『心』の文字が、写真の上に見えた。
墨をつけすぎた筆で書いたような、黒く震えて滲んだ字だった。
瞬間、デジャヴを感じた。
前にも見たことがある。
この『心』は、昔自分が能力者であるとバレかけた日に、鏡を見た時の自分の物と同じだ。
「……?」
(この人の、『心』なのか?)
写真をよく見ると、男はどこか切羽詰まったような、焦ってるような、そんな感じの表情をしてる。
「負の感情……?」
ポツリと、声が出た。それが自分の声であることを理解するのに数秒かかった。
「え?腐の感情?佐月くん、腐男子なの?」
「火影、静かにしぃや!」
いまいち空気が読めてない火影に、ビシッと水晶がデコピンして黙らせる。
相当痛かったらしく、火影は無言でおでこを抑えて黙り込んだ。
「お前、もしかして写真からでも相手の心が読めるのか?」
日和が佐月の肩を擦りながら聞いた。
夜空を溶かしこんだような綺麗な瞳を見ると、やっと頭痛と耳鳴りが収まった。