心見少年、音見少女。

「……ふむ、となると、動機が大体読めてくるね」

「動機……天見を攫った理由ですか?」

論土が藜に近寄って聞いた。

「うん、これはオレの憶測なんだけどね。
まず、あの人は最初から天見を攫っていくつもりだったと思うんだ」

「え、なんでー?」

火影が無邪気に首を傾げた。

佐月はそこまで賢くない頭を懸命に働かせる。

日和の話だと、「そちらの生徒さんを一人」と言っていたと聞いた。

天見が欲しいなら、最初から「錫高野 天見さんを」と名指しで言うのが普通だろう。

思案顔の佐月に気がついて、藜が説明した。

「あの時、草壁三姉妹もその場にいたんだよ」

「え?そうなんですか?」

「その日は一日体験教室が行われててね。X組の廊下側の席に三人縦に並んで座ってたんだ」

藜の推理は続く。

「金目的だったら、ドアの近くにいて、なおかつ宝石を出せる能力を持つあいつらを攫った方が良い。でも、あの人は何故か天見を攫った」

「ただ、あの三つ子がちっこくて視界に入らんかったんとちゃいます?」

水晶が手を挙げて発言する。
< 75 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop