心見少年、音見少女。
「……ふむ、となると、動機が大体読めてくるね」
「動機……天見を攫った理由ですか?」
論土が藜に近寄って聞いた。
「うん、これはオレの憶測なんだけどね。
まず、あの人は最初から天見を攫っていくつもりだったと思うんだ」
「え、なんでー?」
火影が無邪気に首を傾げた。
佐月はそこまで賢くない頭を懸命に働かせる。
日和の話だと、「そちらの生徒さんを一人」と言っていたと聞いた。
天見が欲しいなら、最初から「錫高野 天見さんを」と名指しで言うのが普通だろう。
思案顔の佐月に気がついて、藜が説明した。
「あの時、草壁三姉妹もその場にいたんだよ」
「え?そうなんですか?」
「その日は一日体験教室が行われててね。X組の廊下側の席に三人縦に並んで座ってたんだ」
藜の推理は続く。
「金目的だったら、ドアの近くにいて、なおかつ宝石を出せる能力を持つあいつらを攫った方が良い。でも、あの人は何故か天見を攫った」
「ただ、あの三つ子がちっこくて視界に入らんかったんとちゃいます?」
水晶が手を挙げて発言する。