心見少年、音見少女。
五、ポンポンテレポーテーション
「氷雨がいなくなった」
間地先生に呼び出され、厳重に内側から鍵を掛けられたX組の教室。
先生の口から早朝の眠気も吹っ飛ぶ様な報道が告げられた。
「……は?」
沈黙を破ったのは氷雨の兄である水晶だった。
昨日氷雨と同室だった金が、土下座するような勢いで頭を下げる。
「ご、ごめんなさい、水晶先輩!!夜中に連れていかれちゃったみたいで、朝起きたらいなくなっ―――」
「そないな過去の説明はええねん!!要らん!!氷雨は何処いるん?!」
間髪を容れずに水晶が金に掴みかかる。
「ふぇっ……分かりません。多分、天見さんと同じ所かも……」
「なんで見とらんかったん?!ただでさえ天見がどうなってっか分かんねぇのに!!あいつ氷の能力者だから身体弱ぇんだよっ!!?てめぇも分かってんだろ?!!」
「やめろ水晶。騒いだってお前の妹は戻ってこねーぞ。身内が大事なのはこっちだって同じだ。金が私の親戚だって事、忘れてないだろーな?手ぇ出したら承知しねぇかんな」
すかさず間地先生が水晶と金を引き剥がす。
小さい金には、怒りに満ちた水晶の力は強すぎたらしく、けほけほと噎せていた。