心見少年、音見少女。
カゴメが泣き出した金を抱き締めて落ち着かせる。
(あれ、水晶、また標準語……)
「佐月くん」
火影が佐月の服の裾を引っ張ると、教室の隅の方へ連れていった。
大きな声では言えない話があるらしい。
「……水晶はね、お母さんを病気で亡くしてるの。あたしも昔はよくお世話になってたんだ、活発で関西弁で喋ってて、明るく元気で……」
「じゃあ、もしかして水晶の関西弁って……」
「水晶のお母さんが亡くなってから、ヒィちゃん……氷雨は毎日泣いててね、少しでも代わりになれたらって思って、あの喋り方なんだと思う」
「……」
「あの眼鏡も伊達眼鏡だよ。お母さんの使ってたヤツと同じ形。時田家は父子家庭になって、お父さんも忙しくなったから、水晶も氷雨を寂しがらせないように必死なんだったと思う」
「だからあそこまで……」
「寂しがり屋のくせに、自分一人でどうにかしようとしちゃってさ。辛いならあたしだって力になるのに」
火影は大人びた笑みを向けた。
「すーいしょー。喚き散らして周りの人に迷惑かけるより、もっと他にやんなきゃいけない事あるんじゃない?」
「……」
拗ねた子供のように、水晶は火影から視線をそらす。