心見少年、音見少女。
「なっ……」
どこでこんな情報が知れるのだろうか。
佐月はさっき火影に聞いて知ったくらいなのに。
「父子家庭で女の子がいると大変ですよねぇ。娘を持つ私は分かりますよ。女の友情はもろいですからね。
女子の間で流行っている事にうまく乗れないと、仲間外れにされてしまいそうになりますから、いちいちすぐ忘れられるものを買ってあげなくてはなりませんし」
「ひ、氷雨はそんなんちゃう!友達も皆ええ子や!」
「でも、その為にアルバイトして稼いで、氷雨ちゃんの私物に回してるんでしょう?」
「……」
「君だって、やりたい事や欲しい物があるでしょう?氷雨ちゃんがいなければ、もっと君は自由になれるんですよ?」
「ぼ、僕は……」
水晶は頭を抱えて膝をついた。
もし氷雨が、妹という存在がいなかったら、水晶は火影に告白できる心の余裕も、友達と出かける事も、自分の欲しいものを買う事も出来る。
その気持ちと、自分の正直な欲求との葛藤が頭の中で起こってる。
催眠術のようだ。
この男は人の弱い所を集中的に攻撃してくる。
「すいしょー!どうしちゃったの、しっかりしてよ!!」
火影が水晶の肩を揺すって叱咤する。