溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
ドンドンドンと、地震かと思うようなノックに雰囲気をぶち壊された。
けたたましいノックに、甲斐も短髪の髪を豪快に掻いてベットから面倒くさそうに起き上がる。
「誰っすか? こんな時間すよ」
ワンピース丈のキャミソールだけの私は居たたまれなくなって、ベットでシーツに包まって甲斐の様子を伺う。
甲斐はドアスコープから廊下を覗くと、だるそうな表情が一変し、目を見開いた。
「ありさ!」
私が居ることも忘れて、躊躇せずに。
甲斐はドアを開けた。
私の目に飛びこんできたのは、白いウエディングドレス。
白いウエディングドレスに身を包んだ、甲斐の元カノだ。
ばっちり付け睫毛までしている徹底ぶり。
「ごめんね。甲斐君。ごめんね。ありさ、外国に引っ越すなんて怖くて怖くて毎日泣いてたの。でも、甲斐君が追いかけてくれなくて、じゃあありさの涙は誰が止めてくれるのって思ったら、甲斐君を失いたくないって気付いたの」
甲斐の胸にしがみ付いて、可愛く涙を流す。