溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
六、五日目。泡になって消えて。
お決まりの一緒のベットでの朝。
ジェイドさんが頼んでおいてくれた、ルームサービスのインターホンでゆっくりと目を覚ました。

手を出さない保証はないとか言っておきながら、彼は私が嫌がるようなことは一回もしていない。

ただ、堅くて温かい彼の腕枕が嬉しくて、痛くて寝心地はあまり良くないのだけど、嬉しくて。

まだ起きそうにない彼の長い睫毛を指先で優しくなぞってみた。

「っといけない」

もう一回、インターホンが鳴り、急いでベットから飛び起きて扉の前まで小走りで向かった。


「おはようございます。朝食をお持ち致しました」
扉を開けたら、若い男のコンシェルジュがにっこりと笑って立っていた。

てっきりケイリ―さんかと思って、眠っていたままの姿で飛び出したのが、何だか途端に恥ずかしくなった。

「すいません。支配人は丁度手が離せなくて。呼び鈴も二回押して出なかったら戻って来るように言われていたのですが、起こしてしまたのでしたらすいません」

とても丁寧で綺麗な日本語を話すコンシェルジュさんだった。
歳は多分私とそう変わらないと思う。
なのに支配人の代わりを頼まれるって――信頼を置かれているのかも。

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