溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
「いえいえ。あの、ジェイドさんはちょっと昨日の電話が長引いちゃってまだ眠ってます」
「そうなんですね。日本の方も熱心ですね。支配人もズバズバ言ってますが、どうやら――」
そう言いかけて、彼は急にぴんと背筋を伸ばして私の後ろを見た。
私も振り返ると、どうやら小さな物音が寝室から聞こえてくる。
彼はその音に気付き、ジェイドさん用の珈琲も入れ始めた。
凄い、気遣いや周りの様子を見て上手に臨機応変に動いて。
流石、ジェイドさんの豪華客船だ。船員は皆、プロの接客をしている。
「おはようございます。ブラフォード様。珈琲で良かったですか?」
「そんな他人行儀は止めてくれ」
「でも、プライベートな旅行中ですので」
クスクスと笑うと、そのまま座ったジェイドさんに珈琲を渡す。