溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
「ナ、ホ」
ジェイドさんの膝の上に片足が乗ったまま倒れ込んでいる私と、ぼうっと目を開けたジェイドさんの目が合った。
「ううわ、ちょっと、手を離して下さいよ!」
「ナホ」
うわ言のように私の名前を呼ぶ声のトーンからして、まだジェイドさんは寝ぼけているか酔っぱらっている。
ちょっと舌足らずな喋り方が、いつもの自信満々な話し方とギャップがあって可愛い。
というか、顔近いよ。
「今日は、嬉しかったよ」
「酒臭いから、取り合えず手を離して」
「感情に流されて、WKJグループとの契約を破棄しようとした俺を止めてくれて……嬉しかったよ」
ふんわりと甘く笑う。
一瞬ドキッとしたけど、うつらうつらと喋るその雰囲気は、完全に寝ぼけているんだと理解出来た。
掴まれた腕は、そんなに強くないから簡単に逃れるのに。
私の身体は動かなかった。