溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
それがジェイドさんの唇だと理解するのに数秒かかって、理解した時にはもう既に遅かった。
ジェイドさんの唇が、私の肌に触れた。
そう思うと甘く痺れてしまった。
甘く痺れて、息が上手く吸えなくて恥ずかしくなる。
寝ぼけてるからいつもより大胆なんだ。
「匂いは消えてる。消えなくても、こうすれば消せる」
「ちょっと」
「でも、キミの心からどうすれば全て消えるかな」
眉間に皺を寄せながら、悲痛な顔でそう言う。
私まで切なくなる。違うよ、違う。
もう私の心には甲斐は居ないよ。居るのは――。
伝えられなくて苦しい。苦しいよ。
「ナホがあいつのことを少しでも考えているのだと思うと、気持ちが抑えられなくなりそうだ。俺は、こんな気持ち誰にも持ったことが無い。今日、初めて燃えあがった」