溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~

ちょっと英語圏の人独特の、イントネーションというか。
とにかく、その名前の呼び方が好き。
「ナホ? 聞いてる?」

首を少し傾げてジェイドさんが、また私の名前を呼ぶ。
それだけで、幸せな気持ちになる。
「聞いてるよ! 今日は私と過ごすんでしょ?」

「ああ。何処に行こうか。寄港しないで7日間ずっと海の上だが、それでもまだまだ楽しめるだろ?」
豪華客船なんて乗ったこと無いから
七日間ずっと乗船してても違和感は無かったし、まだまだ回れていない場所もあるから確かにその通りだ。
得意げな顔でそう言われると、可愛くてついつい笑ってしまう。

「そうですね。何か一生心に刻まれる思い出が欲しいな」

ポロリと零れ落ちた本音に、自分でも暫く気付かずに、のんびりとパンにバターを付けて口へ運んでいた。

「思い出?」
怪訝そうにジェイドさんに聞き返されて、始めた冷や汗が噴き出てきた。
「や、あの、ほら、いろいろさ、あの、バタバタだし、熱出たし、甲斐も来たし、そのああの」

うわー。
穴が欲しい。穴に入りたい。
上手く説明できないのに、無意識って恐ろしい。
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