溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
と、早速躓いた私の元に、お姉さんが全く来ない。
子供のいる参加者の方ばかりで、私の前を笑顔で通過するだけ。
明らかに故意だ。ジェイドさんに教えて貰えるだろうと思われたか、ジェイドさんに最初から作って貰う為に参加したとしか思われていなさそう。
仕方ない。今日までは婚約者なんだもの。
「ジェイドさん、教えて」
「お、もう降参かな」
と言いつつも、腕まくりなんてして張り切っている。
「昨日、部屋に入ったらぶら下がっていた猿って難しいの?」
「いいや、あれはハンガーさえあれば作れるし」
「難しそう」
三角に折ったあとの、内側にくるくると巻きこみながら折って羽を作る部分で、ついつい長いジェイドさんの指先を見つめる。
こんなにほのぼのとイベントを楽しんでいると、また明日もあるんじゃないかと錯覚してしまいそうだ。
「上手ね、手先が器用なんて羨ましい」
「女性を御もてなしするのに、器用でないと出来ないこともいっぱいあるだろ。これは努力だよ」
テーブルの上に舞い降りたには、ジェイドさんによって作られた白鳥だ。
羽の部分の折り方が、左右全く同じ長さで、流石としか言えない。