溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
「でも、あの時、君は俺の助けが必要だった。偶然にも俺の懐に体当たりしてきたこの出会いは偶然じゃなく、――きっと運命なんだろう」
「え?」
「俺も、日本へ行きたいと思っていたがなかなか仕事と調整できなくて困っていた。婚約者の紹介だと言ったら、スタッフ達がこんなに協力的になってくれると思わなかった。こうでも言わなければ、ハワイから日本へのクルーズは叶わなかった」
ん?
もしかしてこの人、本当は船長だから休みなんて取れるような暇は無い人なの?
そんな人が、嘘を吐いてまで日本へ行きたいってちょっと違和感がある。
「本当に弟さんに会いに行くのが目的ですか」
静かにエレベータが到着し、鏡のように磨かれた黒の大理石の床を仕立てのいい革靴で音を響かせながら彼は静かに歩いて行く。
「女の人って感がするどいね。未来の大切なお嬢さんに会いたいって方が大きいかな」
未来の大切なお嬢様?
この人、日本の令嬢とでもお見合いするのかしら。
「さあ、入って」
「え」
「俺の船の二番目に良いマスタースイートルーム。――俺は一番気に入っているがな」