溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~

入るとすぐに広がるオーシャンビュー。デッキに出なくても、此処から景色を一望できるんだ。
広いバルコニーに、いくつもの部屋にゆったりと配置されたツイン・ベッド。ベッドルームとリビングルームが別れているし、リビングにはウェルカム・シャンパンにフルーツの盛り合わせ。
客室とは思えない豪華な部屋に、私の足は石化してしまい動けない。
これで、二番目のスイートルームなんだ。

「どうした? 抱っこして部屋に入れてとか言うのか?」
「言いません。できたら普通の一人部屋とかで良いです」

こんな髪の毛一本でも落ちると景観が損なわれてしまいそうな部屋、ストレスしか堪らないよー。

「それはできない。もう君は俺の婚約者と言ってしまったし」
「あれは貴方が勝手に」
「それに、そんなに寂しそうな君を一人に出来るわけないだろう?」

少し首を傾げて甘えるように、笑う。
心配しているのだから、我儘言わずにおいでと。
その翡翠色の目が言っている。

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