溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
「ナホ、これは運命なのだから諦めなさい。俺と君はお互い必要だったからこうなる運命だったのだから」
お互い必要だったから――?
「俺の婚約者としてこの7日間居てくれるのならば、君には極上のおもてなしをしよう」
キャリーケースをクローゼットに置き、彼は跪いて私に手を差しだした。
御伽の国からやってきましたと言われたら、子供の様に信じてしまいそうな、
王子様みたいなルックスで私を見上げる。
「君がこの船に滞在する期間だけでいい。俺の婚約者になってくれませんか?」
手を差しだされた。
ああ、これが恋というものか。甘く口の中に広がっていく雰囲気に、そう錯覚してしまいそうになる。
その瞳に吸い込まれて、息が出来ないの。
言葉が出てこないの。
声を奪われた人魚みたいに、ただ立ち尽くす。
こんなに素敵で、甘い笑みを見たことがない。
背中に走る電流で足元から崩れてしまいそうな。