溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
「昨日はあんなに嬉しそうに踊ってたくせに」
「うわ。見てたのね。アレは夢よ! アンタも忘れなさい」
無理矢理部屋に入って偉そうにそう言っていたら、今度は思い切り大きく扉をノックされた。
思わず甲斐の後ろへ隠れると、彼がスコープから外を確認してくれた。
流石にもう勢いで扉を開けるようなことはしなくなったみたい。
「おーい、七帆」
「何よ」
「夢がノックするわけないぞ」
――夢?
何を甲斐は言うのかと思いつつも、もしかして?
そんな甘い期待を持ってスコープを覗いた。
「――っ」
居る。
船長服姿のジェイドさんが、息を切らして扉を叩いていた。
「甲斐、早くヘリに行こうっ」
「ちゃんと話しあえばいいじゃないか。ジェイド船長だって此処までお前を心配してくれているのに」
「昨日、ふられての! だから話し合う事なんて無いんだから」
いざ言葉にすると凄く胸が抉られる。
そうだ。あっさりふられてしまったんだ、私。