溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
「指輪を、テーブルに置かれていて――それまで俺自身分からなかった気持ちが吹っ切れた。キミにもう一度この指輪を嵌めて欲しいんだ」
――は?
「し、信じられないっ。昨日の今日で、本当に最低」
ぶわっと目頭に涙が溢れてきて、何処までもこの人に振り回される簡単な私の心に嫌悪した。
私の気持ちを分かっていてこんな事言うなんて、軽んじているようにも思えた。
「ちょっと、失礼」
近づいてきたジェイドさんに、二、三歩後ずさったけれど、あの日のように簡単に抱きかかえられてしまった。
「お、降ろしてください」
「Mr.甲斐。騒がせた。失礼するよ」
片手だ簡単に扉を閉めて、甲斐にそう言うとそのまま歩き出す。
「七帆をいじめないでやってくださいよ」
苦笑する甲斐に、ジェイドさんは振り返って、大きく頷いた。
「ああ」