溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~

目を目を見開いて言葉を失っている私に、彼は尚も続ける。
私の瞳に映る、燻った不安を消そうとして、愛を紡ごうとしているんだ。


「昨日も、甲斐の会社の人に昇進をチラつかされても、キミははっきりと拒否して俺の前では本当にあの言葉を無視していた。権力にも屈せず、君は俺との時間を大切にしてくれた。それに、俺の家族と同様に大事なクルーを気遣ってくれる優しい女性だ。それで、分かったんだ」

また一段一段と、ゆっくり階段を下りて行く。

降りて行くデッキの先に、ケイリーさんやブラウさん達、コンシェルジュが集まっているのが見える。

皆の顔が、にこやかに笑っていた。


「俺の理想の女性は――強がりでお酒に弱くて、一緒にスポーツを楽しんでくれて、プライベートに仕事を持ちこまないように、そしていつも笑顔で俺を振り回してくれる人」

皆の前で下ろされると、ジェイドさんは跪いて、私に指輪を差し出した。

「俺の理想の女性になってくれませんか――ナホ」

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