溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
両思いになったのに、信じられなくて逃げだしたいのはきっと、
これが100年の恋でもないからだ。
絶対に違う。
もうロマンチックな雰囲気に流されない。
階段を急いで登っていたら、右足の靴が脱げてしまった。
振り返った時、空に映り出したのは、――ヘリ。
甲斐たちが、一足先に帰って行くのを見て、私が逃げ込む場所も無くなった事に気づいた。
「ナホ。逃がさないよ」
靴を手にしたジェイドさんが、私の腕を捉えた。
「靴をキミに送ったのは――俺の元へ歩いてくれるため。俺が毎日、君の靴を脱がしてあげるよ」
「う。甘い声で囁かないで」
「キミに服を送った理由も――同じなんだけど」
翡翠色の瞳に、私の顔が映し出されている。
彼の心に私が映っているんだ。
「ナホ、もう不安になせないと誓う。一生、誓う。だから、キミの時間を俺にくれないか」
「ジェイドさん」
右足が脱げたまま、片足で私は立ったまま、彼を見下ろす。
未だに信じて良いのか、夢の続きなのかわからないまま、実感が欲しくて手を伸ばす。
そんな私を、彼は両手を広げて受け止めてくれた。
コンシェルジュや、乗客の脚光や盛大な拍手を受けながら、私たちはまた、7日間過ごしたスイートルームへ戻った。
「昼には、出てきてくださいね」
そう言ったブラウさんは、ケイリーさんから耳を引っ張られてた。