溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
「君が喜ぶためにこのお店を選んだんだ。はやく食べよう」
「……」
一瞬、信じてしまいそうになった。
危ない危ない。
私とこの人は、今日が初対面なんだから。
「では、君を奪還できた素晴らしい日に乾杯」
「……あはは、乾杯」
彼の隠さないというか、飾らないストレートな言葉はちょっといちいち恥ずかしいけれど、どうやら天然なようだ。
持ち合わせた天性の紳士だと思うことにしよう。
「おいしい! やだ! 美味しい!」
クセが無くアッサリ目だから、ガーリックの味も強くない。
ワインにめちゃくちゃ合って美味しい!
「うんうん。美味しそうに食べる姿は、女性は皆可愛い」
皆、と一括りに纏められても構うもんか。美味しい。
「君が食事だけでもそんなに笑顔に戻るなら良かった。今度はちゃんと、笑顔になれる恋を見つけるんだよ」
「恋、ねぇ。難しいかもしれないです。私、恋愛未経験だし、今はもうどうして甲斐が好きだったか思い出せないもん。もう仕事に生きようかな。取りたい資格とかあるし」