溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
「前向きなのか逃げているのか。そう言えば気になっていたけれど」
ワインを継ぎ足してくれた後、彼もワインを一気に飲み干す。
そのワイングラスを持つ手とか、飲み干した後の濡れた唇とか、イケメンってだけで絵になるなあ。
何歳ぐらいなんだろう。豪華客船の船長するぐらいなんだから年上なんだろうけど、若干女性に軽くて支配人みたいな威厳はないし。
でも、この翡翠色の瞳は、覗きこむとなんだか金縛りにあったような気分になるな。
「聞いている? ――ナホ」
「うわっ」
「俺の顔に見惚れてた?」
ふふんとドヤ顔で言われて、すぐにナプキンで口を拭くフリをしつつ睨みつける。
この自信家め。
「違います。どうしたんですか?」
「だから、君は英語も得意なのかなと気になって」
「英語……。そうですね、ネイティヴイングリッシュならある程度は。私の父が英語の教師をしているんです」