溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
そっか。私より七歳も年上なんだ。
そんな風には見えなかったのは、きっと人懐っこい少年みたいな笑顔のせいだ。
だって、ナイフやフォークのテーブルマナーや、ワインを見つめる視線とかいちいち色っぽいというかセクシーなのに、笑顔はくしゃくしゃになって子犬みたい。
「ブラフォードなんて他人行儀は止めて、ジェイドと呼んで欲しい」
「ジェイドさん?」
「ああ。日本では翡翠という宝石の名前だろう?」
「じゃあ、翡翠さんだ」
始終ケラケラと笑う私に、漸く飲ませ過ぎたと気付いたのかグラスに水を注ぎ出した。
「ちょっと、私、いつもビールぐらい飲みますよ。大ジョッキ2杯は飲みます」
「それは、安い酒だろう。もう止めて、一緒にバルコニーで夜景でも見て酔いを冷まそう。
「え――。もっと飲みたいです」
「じゃあ、デザートに美味しいマンゴーラッシーを注文しよう。あれは船に乗っている間に必ず飲んでおくべきだ。すっきりして美味しい」
上手くワインから遠ざけられてしまった気がするけれど、ジェイドさんはすぐにケイリ―さんに注文してしまった。
「ほら、ナホ。おいで」
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